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May 04, 2008

強い現場を実現する“見える化

 2006年に入り、新聞や雑誌、フリーペパーの記事など、またセミナーやイベントの講演など、さまざまなところで“見える化”という言葉を目に、耳にする機会が多くなってきた。なぜ今“見える化”が注目されるのか。また、“見える化”とは、何であり、どのような効果をもたらしてくれるのだろうか。

 “見える化”をひと言でいえば、ビジネスにおける問題を常に見えるようにしておくことで、問題が発生してもすぐに解決できる環境を実現すると共に、問題が発生しにくい環境を実現するための取り組みだ。“見える化”の実現により、コスト上の無駄や改善の余地がどこにあるかなどを明確にし、強い企業を実現できる。

強いトヨタを作り上げた“見える化”

 “見える化”は、何も新しい言葉ではない。そもそも“見える化”は、トヨタ自動車が企業改革における取り組みのひとつとして導入したことで広く知られている。トヨタの“見える化”で有名なのが「あんどん」方式や「かんばん」方式と呼ばれるものだ。

 トヨタの生産ラインでは、問題が発生すると現場の担当者が「あんどん」を点灯することで、問題の発生を早期に知らせ、迅速に対応できるようになっている。また「かんばん」と呼ばれる仕組みでは、必要な部品や数量を書いた札(かんばん)を生産工程でまわしていくことで、必要な部品を、必要なときに、必要なだけ調達できる、ムダのないJIT(ジャスト・イン・タイム)生産を実現できる。

 トヨタを強い企業にした要因のひとつが“見える化”だが、この“見える化”は生産の現場だけで有効なわけではない。たとえば、システム開発の現場を“見える化”することで、より効率的で高品質なアプリケーション構築が可能になるし、もっと身近に自分のやるべき仕事を“見える化”することで、より効率的かつ効果的に仕事を片付けることができるようになる。


「見える化-強い企業をつくる“見える”仕組み」

 このように“見える化”が製造業の現場だけでなく、あらゆるビジネスの現場で注目されるようになった要因のひとつに、ローランド・ベルガー取締役会長 早稲田大学大学院 教授である遠藤功氏の著書である「見える化-強い企業をつくる“見える”仕組み」(2005年10月発刊/東洋経済新報社)が挙げられる。

 遠藤氏は“見える化”に注目するようになったきっかけを、「私の問題意識として、日本企業がもう一度原点に戻り、現場の競争力を高めて行かなければならないというのが根底にある。そのためには、“見える化”を避けて通れなかったことから、このテーマに取り組みはじめた」と話す。

 “見える化”という言葉は、一見誰にでも分かる言葉であるために、各自の解釈により独自の取り組みが行われていることが多い。遠藤氏は、「独自の取り組みが悪いわけではないが、本質的な部分を勘違いしている取り組みが多い」と話している。

 「“見える化”というコンセプトは、分かりやすそうで、実は奥の深いもの。本質を理解することなく、ただ闇雲に現場レベルで推進しても“見える化”を定着させることは難しい」と遠藤氏。それでは“見える化”の本質とは、いったい何であろうか。

身のまわりの“見える化”の例

 “見える化”の本質を遠藤氏は、「共通の認識が持てること」と言う。

 身のまわりで“見える化”を考えて見ると、たとえば信号機は、赤、黄、青という3つの色だけで、すべての交通を制御する非常に高度な“見える化”の例といえる。信号機では、誰もが、赤は止まれ、黄色は注意、青は進めという共通の認識を持っていることからたった3色で交通を制御できる。

 また、野球場のスコアボードも“見える化”の好例といえる。スコアボードがあることで、今何イニングなのか、得点や打順、守備位置、アウトカウントなどはどうなっているのかなど、試合の状況を一目で把握することができる。これも野球のルールに対する共通の認識があることからスコアボードだけで試合の状況を把握することが可能になる。

 それでは会社の中には、信号機やスコアボードのような仕組みがあるだろうか?

 遠藤氏は、「あなたの業務上の問題は? となりの同僚は何を悩んでいるのか? ベテランはどんな知恵を持っているのか? 工場や営業所の問題は? 顧客の本音とは? このように企業の中は、実は見えているようで見えないことだらけ」と言う。

 「問題や異常がタイムリーに見えれば解決できる。人間は、目に見える問題は解決しようとする。見えないから解決できない」(遠藤氏)

 たとえばトヨタは、2004年3月期の純利益が1兆2000億円で、1年間に2300億円のコスト削減を実現している。この2300億円のコスト削減は、トヨタの現場の地道な改善提案活動により生み出されたものだ。業務の改善提案は、年間61万件提出され、そのうち91%は実行されているという。

 また花王は、これまで24年連続で増益を続けてきた。この要因のひとつとして同社では、1986年より企業全体でTCR(Total Creative Revolution)運動を続けており、その成果として年間150億円のコスト削減を実現している。さらに在庫金額は、1998年を1とした場合、2003年は0.6に、欠品率は1998年の0.12に対し2003年は0.04になっている。つまり在庫を4割削減し、欠品率を3分の1にしている。

 「トヨタが2300億円のコスト削減ができたのは問題が見えたから。花王がある製品の改良を25回も行ったのは、顧客のニーズが見えていたからだ。したがって、見えることこそが競争力の原点になる」(遠藤氏)

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見える化とは 

見える化とは (1) 現場力を向上する
見える化が重要になってきている理由は、経営の三要素である「ビジョン」「競争戦略」「オペレーション」のうち、企業間で大きな格差がでているのが3番目の「オペレーション」つまり「現場力」であるという視点で解説されています。

■三つの条件が揃った「現場力」
 ・問題解決に対する「当事者意識」 
 ・全員理解・参加の「組織能力」
 ・高い志による「優位性構築」

 この「現場力」、つまり「組織としての問題解決能力」を向上するために必須なのが、第一歩としての問題を発見したり設定する能力、つまり「見える化」ということのようです。

 書籍では見える化の元祖ともいえるトヨタの「アンドン」の事例を元に、下記の3つのポイントを指摘しています。

■トヨタにおける「アンドン」にみる「見える化」の本質的意味
 1.問題の開示・告知
 2.この責任による問題発見
 3.チームによる問題解決 

 このポイントは、問題を探すだけでなく、解決するところまでをセットとして流れを作っているところのように思います。
 問題が見つかっても、それが他人の責任に転嫁できてしまうと、ついつい問題の押し付け合いになってしまいますが、問題を自分およびチームのものだと明確に認識できれば、解決にもスムーズに結びつくように感じます。


見える化とは (2) 「見る」ではなく「見える」
見える化のポイントとして、見える化は単純な情報共有ではなく、「見る」努力をしなくても自然と事実や問題が目に飛び込んでくる「見える」状態を作ることを上げています。
 具体的な見える化の勘違い例としてあげられているのが下記の四点。

■見えていると勘違いしている企業の4つの共通点
 1.「悪い情報」が見えていない
 2.「組織」として見えていない
 3.タイムリーに見えていない
 4.伝聞情報しか見えていない

 実際、情報共有のためのシステムやツールを導入する際というのは、その導入自体が目的化してしまい、本質的な問題を忘れた議論になってしまいがちです。
 そうすると、実際に共有されるべき情報が共有しにくいシステムを作ってしまい、誰も使わないということになるという結果になるのは非常によくわかります。


 あわせてこんな見える化の落とし穴の紹介もありました。

■「見える化」の四つの落とし穴
 1.IT偏重
 2.数値偏重
 3.生産偏重
 4.仕組み偏重
 
 
 システムを導入したところで、そのシステムから問題点が浮き彫りになって利用者に伝わらなければ意味が無いわけで、このあたりは気をつけたいところです。

 ちなみに、書籍では、結果を定期的に壁に張り出したり、アナログな手法との組み合わせが紹介されていましたが、個人的には携帯電話をアラートなどにうまく活用することで、PCの画面の中に閉じた世界から、利用者の意識までつなげた世界を構築することができるのではないかと感じています。


見える化とは (3) 「見える化」の5つのカテゴリー

■「見える化」の5つのカテゴリー

1.問題の見える化
企業活動において発生する大小さまざまな異常や問題が、タイムリーに「見える」ようにする

2.状況の見える化
企業活動の現状がどのような状態になっているのかが「見える」ようにする  (状況が見えなければ、問題を発見したり、打ち手を講じたりするのは不可能)

3.顧客の見える化
市場の変化に敏感な企業でありつづけるために顧客が「見える」ようにする  (見える化は企業の内部活動に限定して考えがちだが、もっとも重要な柱の一つが顧客の見える化)

4.知恵の見える化
社内のあらゆる知恵を結集させたり、暗黙知を形式知に変換させて「見える」ようにする  (問題解決を可能にするのは、人間の知恵であり創意工夫)

5.経営の見える化
オペレーション全体の執行を監視・監督するために経営を「見える」ようにする  (上記の4つのカテゴリーはオペレーションの見える化)


まぁ、こうやって並べてみるとある意味当たり前のことではあるのですが、たしかにこの5つのポイントをちゃんと実践できている企業がどれだけあるかというと非常に少ないように感じます。
特に、システムやソフトウェア側から考えてしまうと、個別の問題点に対する対処療法になってしまいがちですが、こういった全体を捉えた視点での本質的な問題解決ができるものを目指していきたいです


■「見える化」の5つのカテゴリーと11の対象項目


1.問題の見える化
    異常の見える化
     ギャップの見える化
      シグナルの見える化
    真因の見える化
    効果の見える化
2.状況の見える化
    基準の見える化
    ステータスの見える化
3.顧客の見える化
   顧客の声の見える化
    顧客にとっての見える化
4.知恵の見える化
   ヒントの見える化
   経験の見える化
5.経営の見える化

見える化とは (4) 「見える化」すべき3つの情報
前回に続いて、「見える化」本のご紹介です。
見える化本では、1部が解説、2部が事例紹介という形式になっているのですが、1部の最後になるのがこの3つの情報の話です。
書籍では、見える化とは単なる情報共有ではなく、「問題解決のための情報共有」であると強調されており、見える化の対象となる情報を、三つに分類しています。


■見える化すべき3つの情報

1.信号情報
異常や問題が発生したという事実を伝え共有

2.支援情報
特定された問題解決を支援するための情報

3.基礎情報
網羅的・多面的な情報やデータ


ここで強調されているのがそれぞれの情報によって「見える化」の仕方に向き不向きがあるということ。  システム開発の側としてはIT偏重になることの問題を改めて考えさせられます。
この情報分類ごとのアプローチは、企業向けシステムの製品開発に非常に参考になりそうです。

■情報の種類によって異なる見える化の方法論


       基礎情報       支援情報        信号情報
主たる目的   問題発見/解決    問題解決       問題発見
主たる情報内容 定量・定性情報    定量情報      信号/データ/現物

主に使用される
カテゴリー
     「状況」「顧客」「経営」
                 「問題」「知恵」
                           「問題」

情報の量    多          中         少(ピンポイント)

「見える化」の
道具立て
        デジタル中心 デジタル・アナログ両方   アナログ中心


■“見える化”10のポイント
 ・ 現状の棚卸から始める
 ・ 見せたくないもの、見せられないものほど“見える化”する
 ・ 見えるもの、見せるものを絞り込む
 ・ 鮮度、タイミングを重視する
 ・ アナログとデジタル(IT)を使い分ける
 ・ 分かりやすくシンプルに
 ・ 現場自らが見える仕組みを作る
 ・ 本当の勝負は見えた後
 ・ 見える化のノウハウを共有する
 ・ 経営トップが見える化を牽引する
 
 ただ、単に漫然と情報共有を行うのではなく、何を共有するべきかというのをしっかり考えて共有するということが重要だと改めて考えさせられます。

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