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February 19, 2019

民の文化で楽しい社会を、故・堺屋太一氏が願ったこと

北西 厚一
日経ビジネス記者
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00006/021200018/

 「団塊の世代」という言葉を世に送った作家、堺屋太一(本名・池口小太郎)氏が永眠についた。2月8日午後、多臓器不全のために東京都内の病院で死去。83歳だった。1970年大阪万博を提案、企画し、98~2000年までは経済企画庁長官も務めた。NHK大河ドラマの原作も手掛けた多才な人が最後まで唱えたのは「民の文化で『楽しい社会』を創ること」だった。
 1935年、大阪市で弁護士の息子として生まれた。明智光秀の娘、細川ガラシャが洗礼を受けたとされる教会の真向かいに実家があった。文化に造詣が深い家庭で「歌舞伎や文楽が身近だった」。中学1年の時に訪れた大阪・天王寺の復興博覧会に魅せられ、会場の建築設計に関心を持った。
 ボクシング部に所属して「バンカラをやった」という高校時代を経て、東京大学建築学部に進学。東京タワーができると聞き、夏休みの課題で3本足タワーの設計をした。コンピューターがない時代で構造計算に苦心。ただ、目を悪くして建築家を諦め、3年次に経済学部に編入した。最後に設計したのは地元・大阪の小学校に建てる劇場だったという。
 大卒後は通産省に入省。住友銀行、近畿日本鉄道と迷ったというが、当時付き合っていたドイツ人女性に「迷うのは何が好きか分かっていないからだ。何が好きか考えられるところにいけばいい」と諭され、転職先が多いように思えた通産省に決めた。
 この女性、エリザベートさんは堺屋氏の小説にも出てくる。予備校に通っていた時、いつも途中で電車に乗ってくるエリザベートさん。「あるとき横の席が空いたので腰掛けて思い切って話しかけたらうまくいった。その後、5~6年付き合った。生涯で思い出に残る女性は母、妻、エリザベートさんの3人だった」
 万博の発想は通産省の上司の一言がきっかけ。お見合い話を持ち込まれ「やりたいことがある」と苦しい言い訳で断った。上司の「一生懸命するのはいいことだ。例えば、万国博覧会とか、な」という言葉に応えるため「万博とは何か」を調べに図書館に出向いた。そして、万博の日本開催を提案。70年の大阪万博の企画も担った。
「大阪のいいところはいい加減なところ」
 大阪での開催にこだわったのは、64年に東京五輪があった東京への一極集中が進んでいたことへの危機感だった。「情報発信の場は2つあったほうがいい。政府方針とは違ったが、文化創造活動は大阪発がいいと考えた」。堺屋氏はこの時に唱えた東京と大阪を2つの焦点とする「楕円構造論」を後々まで口にする。
 小説家としてのデビュー作は「油断!」。石油危機に陥った日本を描いた近未来小説で、発行と同時期に石油ショックが起きた。「データを積み上げてその先を想像する。67年には石油消費量が資源の発見量を上回り、やがて資源枯渇になるだろうと考えた」。76年に書き上げた小説「団塊の世代」は世代を象徴する流行語となった。
評論家として活動した晩年、日本文化への観察眼はより深くなっていった。「東京の楽しさは多様性。いろんな人がいるから変わっていても目立たない」「大阪のいいところはいい加減なところ。よく言えば発想の自由だ」。街の個性はそれぞれで、それらを活かすことで「楽しい社会」が生まれるというのが持論だった。
 2025年の開催が決まった大阪万博については「第4次産業革命がテーマとなる」と語っていた。「今後さらに寿命が延びて生産性が向上すると、余暇時間が増える。人はその余暇に何ができるか」。一極集中は社会の効率性を生んだが、文化などを統制し、楽しさを衰退させた。だからこそ、楕円構造論を、というわけだ。
 「国民のエモーションが低下している。安全志向が強く、冒険する意欲がなくなっている」。高度成長期から時代の風潮を的確に表現してきた堺屋氏は、2年前のインタビューで、今の日本にこんな懸念を示し、言葉に力を込めた。「官僚主義もいいが、民の文化こそが大事。やっぱり楽しい社会やないとあきまへん。楽しくないと、結局、経済が回っていかないんですわ」

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